「スポンサーを集める」という発想はどこから来たのか

「どうしてそんなことを思いついたんですか?」

と聞かれることがある。「スポンサーを集める」という発想は、(当たり前だが)もともとあったわけではない。大学生のとき、坂本達さんという人の本を読んだのがきっかけだ。

この本には、ミキハウスに勤める坂本達さんが、会社から4年3カ月の有給をもらって自転車で世界一周をするという信じられないような話が書かれている。海外自転車旅の話はとても新鮮かつ刺激的で、「いつかヨーロッパを自転車で旅したい」と思っていたぼくにとって、非常に影響を受けた一冊だ。

その本の中で、「旅の資金は企業を回ってスポンサーで集めた」と、ひと言だけ書いてあったのだ。何も知識のないぼくは、「スポンサーってなんだ?」と思った。「よくサッカー選手がナイキとかアディダスとスポンサー契約をしているけど、それってつまり・・・、どういうことなんだろう???」 今考えてみれば、ぼくもずいぶん無知だったものだ。

時は変わって、大学3年生の冬。就職活動をしていたぼくは、早稲田で行われた企業の合同説明会に参加していた。そこに、ミキハウスのブースがあった。ミキハウスといえば、子供服。正直子供服に全然興味はないが、坂本達さんについて何か聞きたいと思って、説明会に参加した。いかにも子供が好きそうな女の子が多く、かつ男はぼくひとりで、完全に浮いていた。

説明会が終わって、参加者もみんな出ていった後、ぼくはひとり残って、説明者の女性社員に話しかけた。

「ミキハウスに、坂本達さんっていますよね?ぼく、あの人の本を読んで、感動したんです。」

「そうでしたか。実は今度、弊社で行われる説明会で、坂本が話す機会がありますので、よろしければご参加ください。」

ぼくはミキハウスの説明会に行った。会場は、「子供大好き」な雰囲気に包まれていた。そして、ぼくは会場に入るなり、オーラ全開の人を見つけて、「あの人が坂本達さんだ」と思った。ぼくは自分で作った名刺を差し出して、「今日は坂本さんの話を聴きたくてやってきました。」とだけ伝えて、席についた。

案の定、坂本達さんの旅の話は、おもしろかった。自転車旅という限定されたもの通じて、普遍的なことを話している。とても憧れた。

説明会が終わると、ぼくの前に坂本達さんがやってきた。「あ、中村さん、先ほどは名刺ありがとうございました。これ、私の名刺です。」と言われて、衝撃を受けた。なんて謙虚な人なんだ、と。この広い会場の中で、ぼくの顔をちゃんと憶えていてくれたのだ。「自転車で世界一周」と聞くと、すごく野性的で、体もガッチリしているイメージがあったが、それとは真逆だった。成功者によくある、「すごいだろう」みたいな話し方もみじんもなく、心から謙虚な人だと思った。

ぼくは、正直に自分の想いを伝えた。

「正直なところ、ぼくは子供服にはあまり興味がありません。今は就職活動をしていますが、それが終わったら、自転車で西ヨーロッパを旅したいと思っています。それで、坂本さんの本に、スポンサーで資金を集めたと書いてあったので、具体的にどのようにしたのかを教えていただきたくて、今日ここに来ました。」

相手が相手だけに、「へぇー」とか「君が考えてるほど生易しいもんじゃないよ」とか、軽くあしらわれる覚悟もしていた。

しかし、坂本さんは笑って、「そうでしたか。中村さんは、本気でやろうと思っているんですね。」と言った。それから、約30分間、貴重な時間を割いて、ぼくに話をしてくれた。どのように企業をあたったのか、などアドバイスをいただけた。

一番うれしかったのは、ぼくをひとりの就活生としてではなく、ひとりの対等な人間として、扱ってくれたことだ。

「本当に強い人間って、優しいんだ」

と、そのとき学んだ。

それは坂本さんの話し方でもわかる。人を否定するようなことは言わないし、自分の主張を押し付けるようなこともしない。自分の経験と、そこから学んだことを淡々と話すだけ。静かな口調であるにもかかわらず、言葉には重みがある。経験に基づいているから、説得力がある。ぼくはただただ、感心してしまった。

あと意外だったのは、坂本さんは子供のときから、気の小さい性格だったらしい、ということ。それは大人になっても変わらず、人前で話すのも緊張するし、いつもドキドキしていたらしい。世界一周するような人間が、本当に? と思った。

でも、あるとき気付いたそうだ。確かに気は小さいけれど、だからこそ危険を予知する能力と用心深さを持っている。チャンスを見逃さない繊細さもある。だから、気が小さいことはマイナスではないんだ、これは俺の武器なんだ、と。

そして、話の中でいただいた言葉は、今でも強く残っている。

「とかく人は他人と比べてしまい、自分にないものをみてうらやましく思ったり、自分はなんてダメなんだ、と思ったりします。でも、そうじゃないんです。あれがない、これがない、ではキリがありません。ないものは無限にあります。そうではなく、今自分が持っているものを大切にする。すると、今のままで十分足りているんだということに気付きます。」

坂本達さんと (2010年1月24日)

その力強い言葉を受けて、ぼくは一歩を踏み出した。必ずできる、と思った。

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