ぬいぐるみを連れて自転車旅をした話

ぼくが初めて一人旅をしたのは2009年、大学3年の夏休みでした。自転車で鹿児島まで行ってみようと思い、日本地図を持って横須賀を飛び出しました。

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そのとき、ぼくは何故か、「トロ」というネコのぬいぐるみを持って出発しました。不安でいっぱいのぼくに、母が「トロを連れてけば?」と言って手渡したのです。ぼくはとくにぬいぐるみに対して愛着を持っているわけではありませんが、確かに何もないよりは不安が紛れるかもと、持って行くことにしたのです。

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喋ることもない、表情を変えることもないぬいぐるみが、意外なまでに安心感をもたらすことに気付いたのは、旅が始まってすぐのことでした。それに、美しい風景を前にしたとき、自画撮りするよりも、トロを入れて写した方が絵になるとわかり、たくさん写真を撮りました。

しかし、別れはすぐにやってきました。2日目、浜松に向けて走っていたぼくは、突然トロがいなくなっていたことに気付きました。その30分前、静岡駅のガードレールにトロを乗せて写真を撮ったはいいものの、そのまま置き忘れてきてしまったのです。たかがぬいぐるみのために、慌てて10km近い道のりを引き返しました。しかし、元の場所にもうトロはいませんでした…。

旅の相棒を失った喪失感は、想像以上のものでした。耐え切れず、4日目に訪れた滋賀県の彦根城で、新たな相棒「ひこにゃん」を買っていました。会話はできないけど、何故かいるとホッとする。ぬいぐるみとは不思議な存在だなと思いました。

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ぬいぐるみのための旅行代理店があると知ったのは、最近のことです。社内で回覧されていた業界誌で、たまたま見つけたのです。「ぬいぐるみがお客様」そんな文章を読んで最初は目を疑いました。会社に送られてきたぬいぐるみを観光名所に連れて行き、写真を撮るのが仕事? しかも海外から予約がたくさん? 本当に冗談だと思いました。

ぼくは腑に落ちませんでした。なんでそんなことがビジネスになるんだろうと。しかしその反面で、利用者の気持ちを理解したいという心も芽生えていました。自分の経験もあったので、もしかしたら理解できるかもしれない。

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そう思うと、いてもたってもいられなくなりました。とにかく、代表の方に会って話を聞いてみたい。ぼくは即座にウナギトラベル代表の東園絵さんにご連絡し、ご多忙の中で恐縮ですが、お話を伺わせていただけることになりました。とても楽しみです!

(参考記事)

「ぬいぐるみ」に旅させる旅行代理店 日本(CNN)

日本発の奇想天外な「旅行社」が 世界に共感の輪を広げている(ダイヤモンド・オンライン)

ぬいぐるみと旅する女 出かけられない人たちの夢を代行(日本経済新聞)

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